2020-08-27(べつの仕方で/アレゴリー)

レヴィナスの議論のほとんどすべての決定的な点において、「別の仕方で」という意味の可能性ないしは構築は、「あたかも〜のように」にもとづいている。「あたかも〜のように」は、懐疑論における問いかけや言語の多義的本性がそうであるように、意味の開け…

2020-08-22(子供時代/コメット/ズー)

——それは初めてのことだったの、あなたがこんなふうに言葉に捕らわれたのは?——それが以前にもあったかどうか、思い出せない。でも、これ以後も、人に襲いかかり人を閉じ込める言葉の外へと、怯えて逃げだしたことが何度もあったわ。——幸福という言葉でさえ…

2020-08-19(人形愛/マルジナリア/学魔)

最近読んだ、でいるもの。 ●高橋たか子『人形愛・秘儀・甦りの家』 三篇とも、中年以上の女が少年を人形にするというテーマがあり、たぶん澁澤龍彦への明確なアンチテーゼなんだと思う。『誘惑者』にははっきり澁澤が出てくるが、著者自身による略年譜にも19…

2020-08-12(無垢なる夏/ハッピーアワー)

あさ起きてもまだくらく雨の音がして、じっとそれを聞いているとまたいつの間にか寝てしまっていた日々が恋しい。夏休みに入ってからはすっかり晴れの夏っぽい日が続いている、いちばん暑い時間帯に外に出なければならないのが夏への憎悪を増幅させる。『無…

2020-08-05(ノート/書く)

私はノートをつけることが結構好きで、人がどうやってノートをつけているのかを見るのがもっと好きで、どれくらい好きかというと、小学生の時に「東大生のノートはなぜ美しいのか2」をお小遣いで買うほど好きで(東大に行きたいとかじゃなくて、普通に色ん…

2020-08-02(外は夏/逃避)

絶対むりと思ってたレポートたちも、なんやかやとむしろ最後は余裕があり、ズルする(過去の自分のレポートを焼き増しする)こともなく無事に全部提出して、夏休みを迎えた。終わってみると、あんなにあわあわして絶望的な気分になってたのはなんだったんだ……

2020-07-22(他者/読めない)

また二週間以上あけてしまった。 愛が他者との融合であるとするなら、愛が他人の申し分のない美点を前にしたときの恍惚であるとするなら、あるいはまた心穏やかになにかを所有することであるとするなら、マルセルはアルベルチーヌを愛してはいない。 レヴィ…

2020-07-07(サボる/若草物語)

だいたい調子が悪いときは、この世界に好きなものがあるということを忘れる時で、なぜ忘れるかというと、他人を羨望したり嫉妬したりするからだと思う、つまるところ。ここに書くのを一週間以上開けてしまうのはよくない。 とくに仕事がきついとか、嫌な上司…

2020-06-23(引用/独房)

テキストを「変形する」にはテキストに自分から何かを付け加える必要はない。テキストを引用する、つまりテキストを切り取るだけで十分なのだ。 ロラン・バルト『批評と真実』保苅瑞穂訳 夜(さいきんは2、3時)寝る前に読んで付箋を貼り付けていたところを…

2020-06-20(二重引き出し読書/勉強部屋)

ぼくはもともと文学的な人間でも哲学的な人間でもなくて、またとくに行動的な人間でもなくて、自分が体験したことのなかで気になったことを丹念に敷衍していくタイプです。昆虫採集型です。だから日記や日記めいたものはずっと書いていまして、自分の人生は…

2020-06-05(ぺらい言葉/良い映画)

忘れるなかれ。私の無知ぶりはチャーミングではない。自然については何も知らないの、とかわい子ちゃんぶって告白するより、花の名前は知っておいたほうがいい。私ってよく道に迷うのと吹聴するより、方向感覚を磨くほうがいい。こういう言いわけは累積する…

2020-05-15(言説/経験/大江と村上)

精神分析理論がその中で決定的な役割を担ったこの広い反人間主義的な構想は、フェミニズムの理論にとっても意味と効果を持っている。〔…〕この構想はまた、フェミニストたちが、生きられた経験という無批判な概念に自分たちの有効性を置こうとする主張に用心…

2020-05-06(読書会/ベンヤミン/今後)

勉強は一人でするものだ、ということには完全に同意するし、実際今まで「放課後友達と集まってファミレス(?ミスド?)で勉強する」などやったことがないし(そんな友達がいなかったんじゃない?という突っ込みは置いといて)、グループワークなんて死ぬほ…

2020-04-30(都雅/ウニ)

日記は日付のみが冠された文章ということに意味があると思うけれど、暇つぶしに今までの日記のいくつかにその日の文章のキーワード的なものを付け加えました。便宜的に良い。斎藤飛鳥のブログのタイトルが長くて独特で好きです。 野溝七生子の『山梔』を読ん…

2020-04-26(恥/副言/数学)

かなりのことを「面倒くさい」の一言で片付けてしまう一方で、へんに向上心のあったりする自分を自分でも不思議に思うのだから、他人からみたら私の行動は不可解でしかないのだろう。成人式とか同窓会的なものを面倒だから全部すっ飛ばしてツイッターやイン…

2020-04-16(アンナ・カヴァン/ピアノの神童/パパ的なもの)

今に至るまでずっと抱きつづけているその思い——この世のどんな人のであれ、良識というものにいったいどれほどの意味があるというのだろう。その良識を受け入れたために、私はたいへんな苦しみに耐えなければならない状況に追い込まれたのだ。この苦しみは今…

2020-04-08(aiko的恋愛/否定としてのセクシュアリティ)

予想だにしないことが世界には起こるものだなぁ、とどこか他人事のようにおもう。しかし一ヶ月間外になんの用事もないというのは初めてのことで、あれもこれもやらなくちゃとすこしわくわくしている、わくわくするどころでないとはわかっているのだけれど。 …

2020-04-01(金毘羅/待つこと)

私は何もかも他人事のような涼しい顔をし、人を罵倒しながら、それを他人にユーモアと感じさせ、なおかつ自分がいつも一番正しいいい立場にいる事、を母から期待されていました。それが「男」になる方法だったからです。 笙野頼子『金毘羅』 これはまだ途中…

2020-03-23(ジルベルト/クリストファー・ロビン)

「それがわたしにどうしたっていうの、ほかの人の考えることなんかが?感情の問題で他人を気にするなんて、グロテスクだと思うわ。人は自分のために感じるので、世間のためじゃないわ。ほとんど気晴らしのないお嬢さまが、たまの楽しみでこの音楽会に行くの…

2020-03-21(犬/映画の細い女)

家に誰もいないので今日は静かに過ごせると思っていたのに、隣の家が石を削るような工事をしていたのでうるさくて外に出る。でも良い天気だ。さいきんまた徒歩圏内の図書館のカードを登録し直した。小五〜中二くらいのときにはよく利用していたのに、中三は…

2020-03-20(単調/無印/小津)

あまりにも単調で非生産的な日々を過ごしている。食事回数を減らすためできるだけ寝る、食べる、文字を追う、働く、映画見る、ネットを眺めるだけ。さいごの項目は自己嫌悪が溜まるだけなので、最終手段を解禁(パスワードを覚えられないくらい難しくしてそ…

2020-03-06(成績/いくつかの映画)

不確かな情報ばかりとびかって異常な状況下で滅入っていて落ち着かず、文字を追うことがすこし困難だが、映画は観られる。ユーネクストに観たいのがたくさんあってうれしい悲鳴。最近はベンヤミン関連のものを読んでいてるので、はいはいアウラの凋落ねと思…

2020-02-29(バロックと女性/関連)

トレンチコートだとまだ寒い。春休みに稼いでおく計画が危うくなっているので節約…というふうにはあまりならない。書籍代がかかりすぎていることは承知していて、解決策としては書店に行かないということしかないけれども、書店以外あまり行くところがないの…

2020-02-27(aiko的情緒/破滅者/鬱病的時間)

前の日記にaikoを聴いていると書いたけれど、今のiPhoneにはaikoの詩。しかはいってなかったのに、その後サブスクが解禁され、ずっと聴き続けてたら情緒がおかしくなってきた。こんな非常事態なので(今のところ生活に何の変わりもないが、学校が休みになる…

2020-02-24(失われた時/バニラ)

ところで本を読んでいるときの意識は、私自身の内部の最も深いところに隠されている渇望から、目の前の庭のはずれで視界を限られたおよそ外的なものの姿にいたるまで、さまざまな状態を同時にくり広げるのであるが、その状態によって彩られる一種のスクリー…

2020-02-19(SUQQUの女/女の本/モロイ)

「フェミニズムに出会う」という表現がよくわからない。考えていることが「フェミニズム」と名付けられていた、ならわかる。「どんなにミスがあろうとわたしはアクティビストを絶対的に支持する、わたしにはかけらもないその膂力を」という瀬戸夏子の言葉を…

2020-02-10(バロック/ライプニッツ )

出るつもりだった本番にはやっぱり出られなかったので、ひたすらひきこもり本を読む日が続く。しかし何となく漫然と読んでいるだけなのかもしれないという恐怖が付き纏うので何らかのメモを残しておく。 ●坂部恵『モデルニテ・バロック』(哲学書房、2005年…

2020-02-07(誕生/春になったら)

とうとう二十歳になってしまった。 今年も目白のエーグルドゥースのケーキを自分で買いに行って食べる。しかし食べだすと憂鬱になってくる。誕生日が楽しみだったときもあるはずなのに、年齢を重ねることの恐ろしさなのか、去年と今年はめちゃくちゃになった…

2020-02-02(作者は死なない/両性具有)

急になんの制約もない空白の時間に放り出されると逆に何をしたらいいのか分からなくなる、ということは往々にしてある。 小説を読む上でつい考えてしまうのが、なぜとても好きなものととても嫌いなものが分かれてしまうのだろう、なぜ女性作家の小説の方を好…

2020-01-28(違国日記/レポート)

ヤマシタトモコの『違国日記』が本当に良かった。もう既刊のものはすべて読んでしまった。漫画はあまり読んでこなかったけれど、こういう風にそれぞれの人物の内面が丁寧に掬い上げながら関係していくような物語はめったにないような気がする。松浦理英子の…