2020-09-01から1ヶ月間の記事一覧

2020-09-28(耳にはまぶたがない/呼びかけ)

無限の受動性(見えない強制的な受容)が人間の聴覚の基盤にある。言ってみれば「耳にはまぶたがない」。 聞くこと、それは離れていながら触られること。リズムは振動と結びついている。だからこそ音楽は、本人の意図と関係なく、隣の身体を親密なものにする…

2020-09-24(晩夏/現在)

彼女は彼を見つめた。今日の彼の髪は白っぽく見えた。彼女から四フィートほどのところにいながら、ほとんどこの場にいないかのようだった。彼は我々が「現在」と呼ぶものに対して自分をどう合わせたらよいのかわからないのだ。そもそも「現在」とは何だろう…

2020-09-20(野生の探偵/雪の断章)

ホアキン・フォント 一九九七年一月、メキシコDF郊外、ロス・レオネス砂漠道、〈エル・レポソ〉精神科診療所。 退屈な時に読む本というものがある。それはたくさんある。心静かなときに読む本というのもある。そういうのが最良の本だと私は思う。悲しいとき…

2020-09-16(読むこと/責任)

『三月は深き紅の淵を』が素晴らしい作品だというのは、ここにいる我々や、ほんの少数の人間の共同幻想かもしれない。読書というのは本来個人的なものですから、これはいたしかたない。第一、我々は自分がちょっとばかし本を読んでいると自惚れているかもし…

2020-09-11(ずっとお城で/みえない)

だれかがくすくす笑って、ほかのだれかが「シッ」とたしなめる。あたしはふり向かない。女たちののっぺりした灰色の顔と悪意に満ちた目なんか見なくても、背後に存在を感じるだけでじゅうぶんだった。みんな死んじゃえばいいのにとあたしは思い、それを大声…

2020-09-08(レモンタルト/読書日記/ブックリスト)

長野まゆみの『レモンタルト』を読んだ。いわゆるBLに関して知識ゼロゆえ、ほーこういう萌えがあるのねと、どこか新鮮さを感じながら。男性作家の設定する女性一人称にファンタジーが交じることがあるが、逆もまた然り。これは新宿紀伊國屋でやってた連作短…

2020-09-06(とるにたらないもの/甘やかな)

きのう、生活必需品を買うのが苦手だと書いたが、逆に、あってもなくてもいいものを買うのは好きだ。必要以上のマーカーペン(さいきんはぜんぜん蛍光色でないものがたくさん売っている)、マスキングテープ、マニキュア、おやつ(とくに個包装のがたくさん…

2020-09-05(買い物/緑の光線/雲)

たぶん、生活必需品を買うのが苦手だ。服、下着、おやつ以外の食べ物、絶対必要な化粧品(アイブロウとか)など。必需品なのにある程度選択の幅があるから、何を選んだらいいのかがわからない。だから、できるだけ決まったものを買うようにするとストレスが…