2021-03-22(不眠/天使/努力)

白昼の星のひかりにのみ開く扉、天使住宅街に夏こもるかな/浜田到この星はあなたにあげる「るー」るーと五月蝿い天使、歯で追い退けるー/白糸雅樹何食わぬ顔で天使が乗っている最終電車は星を灯して/佐藤りえ純白のシクラメン立つ冬の隅 天使が鼻をかみす…

2021-03-05(快楽/外/電話)

今週は二度雨が降った。 ここにも堆積ができてきて、過去の私を参照することも増えた。2019-05-16に引用した部分を再びのせたい。 「敵味方じゃなくってさ、一生に一回情熱と快楽に悶えるような激しい恋をするのと、そこそこ楽しいけどそんなには酔えない、…

2021-02-14(欺瞞/不毛/共同体)

戦争を知らない 四時間目、修学旅行の作文の発表会だ。わたしたちは先月、三泊四日で広島・長崎をめぐる修学旅行に行き、その感想の作文を書かされていた。広島・長崎という場所設定には大人の思惑を感じずにはいられなかった。「みなさんは、鉄腕アトムを知…

2021-01-23(練習/生きる/亜美)

したがって、問いに応答するゲームとしての詩作は、自己表現というより自身のプレイヤーとしての能力を試し鍛える「練習」のようなものである。もっとも、詩作を「練習」と見なすといっても、それはもちろんヴァレリーが自身の詩の質に関して無頓着であった…

2021-01-16(エゴ/鏡/エゴ)

書くかどうか躊躇われることを、これから書く。 ネットをやると、いかに自分がありふれているか、替えのきく存在かということがよくわかる。好きなものの共有が、コミュニケーションの手段となっていることも、それによってもっと良いものを知るときがあるこ…

2021-01-14(湖/日記/オフィーリア)

彼らは独自の境界線の内側に潜んでいますが、孤立しているわけではありません。私の心の中にある湖に、各々ボートに乗って浮かんでいます。縁に立てば、一目で輪郭をたどれる、池と見間違うほどの湖です。とは言え、ボートがぶつかり合うことなく自由に漂っ…

2020-12-29(年末/まとめ)

今年ももうおしまい。ちなみに去年のまとめはこちら。 小説部門 非小説部門 映画 音楽 買って良かったもの 小説部門 完全版はこちら と茅野さんの2020年読書まとめ - 読書メーターも *ナタリー・サロート『子供時代』(湯原かのこ訳)…ルリユール叢書のピン…

2020-12-13(風/他生の記憶)

好きとか嫌いとかなくたんたんと先へ泳いで行ける人、泳ぐ能力はあるけれど陸地を離れてしまうのが怖くてあんまり遠くへ行かれない人、好きだから頑張って泳いでいく人、海へ憧れ続けて陸にいる人、海とは違う方向を見るようになった人。 『アダンの風』をつ…

2020-11-22(あき/あと)

疲れたわ、と彼女は言う。たった三キロ歩いただけじゃないの、とエリサベスが言う。そういう意味じゃない、と母が言う。あたしはもう、ニュースに疲れた。大したこともない出来事を派手に伝えるニュースに疲れた。怒りにも疲れた。意地悪な人にも疲れた。自…

2020-11-20(夢/胡桃の殻)

毎日夢を見る。色の付いた夢。五感を刺激し続ける、まるで現実のような、ひどい悪夢。いつの間にかその悪夢の中に紛れ込んでしまい、気が付くと逃れようとしてももう逃れられない。夢はどんどん私の生活を浸食し続け、今ではそれに支配されて暮らしている。…

2020-11-14(飛ぶ孔雀/好物)

山尾悠子と金井美恵子のサインが入った『飛ぶ孔雀』が欲しいというなんともミーハーな欲望に逆らうことなく、浅草橋のパラボリカ・ビスへ。基本的に半径が家〜バイト先のせまいせまい生活圏内にいるのでちょっとした遠出である。体調が悪かったこともあり前…

2020-11-05(会わない/日没)

大半の人とは、会わないまま死んでいく。連絡を取ることも噂を聞くこともなく、中には知らないうちにほんとうに死んでしまう人もいる。だとしたら、会うことがない人と、死んでしまった人と、どこが違うのか。[…] 会えるかもしれない、と、わたしは思い続…

2020-11-01(世界のみかた/ことばで縫合しきることのない境界)

一種のドーピングのようなものなのだ。音楽を聴いていないと手も足も出ない時がある。物理的にも、そして数分をただ息をしてやり過ごすだけのことにさえも。けれど音楽を聴くと、それが鳴っている何分かだけは、息を吹き返すことができる。アザミはときどき…

2020-10-25(薔薇の名前/ボルヘス/遠子)

「なぜですか?一巻の書物が述べていることを知るために、別の書物を何巻も読まなければいけないなんて?」「よくあることだよ。書物はしばしば別の書物のことを物語る。一巻の無害な書物がしばしば一個の種子に似て、危険な書物の花を咲かせてみたり、ある…

2020-10-21(わたしには言葉がある/のらくら)

「共有しない」ボタンを押し続けていないとあっという間に他人の発語に乗っ取られてしまう。私は私の言葉をつむげないと最初から知っていたし、そもそも言葉は私と他者を繋ぐためにあるのだから、私の言葉を守りたいと考えることすら無駄なことなのかもしれ…

2020-09-28(耳にはまぶたがない/呼びかけ)

無限の受動性(見えない強制的な受容)が人間の聴覚の基盤にある。言ってみれば「耳にはまぶたがない」。 聞くこと、それは離れていながら触られること。リズムは振動と結びついている。だからこそ音楽は、本人の意図と関係なく、隣の身体を親密なものにする…

2020-09-24(晩夏/現在)

彼女は彼を見つめた。今日の彼の髪は白っぽく見えた。彼女から四フィートほどのところにいながら、ほとんどこの場にいないかのようだった。彼は我々が「現在」と呼ぶものに対して自分をどう合わせたらよいのかわからないのだ。そもそも「現在」とは何だろう…

2020-09-20(野生の探偵/雪の断章)

ホアキン・フォント 一九九七年一月、メキシコDF郊外、ロス・レオネス砂漠道、〈エル・レポソ〉精神科診療所。 退屈な時に読む本というものがある。それはたくさんある。心静かなときに読む本というのもある。そういうのが最良の本だと私は思う。悲しいとき…

2020-09-16(読むこと/責任)

『三月は深き紅の淵を』が素晴らしい作品だというのは、ここにいる我々や、ほんの少数の人間の共同幻想かもしれない。読書というのは本来個人的なものですから、これはいたしかたない。第一、我々は自分がちょっとばかし本を読んでいると自惚れているかもし…

2020-09-11(ずっとお城で/みえない)

だれかがくすくす笑って、ほかのだれかが「シッ」とたしなめる。あたしはふり向かない。女たちののっぺりした灰色の顔と悪意に満ちた目なんか見なくても、背後に存在を感じるだけでじゅうぶんだった。みんな死んじゃえばいいのにとあたしは思い、それを大声…

2020-09-08(レモンタルト/読書日記/ブックリスト)

長野まゆみの『レモンタルト』を読んだ。いわゆるBLに関して知識ゼロゆえ、ほーこういう萌えがあるのねと、どこか新鮮さを感じながら。男性作家の設定する女性一人称にファンタジーが交じることがあるが、逆もまた然り。これは新宿紀伊國屋でやってた連作短…

2020-09-06(とるにたらないもの/甘やかな)

きのう、生活必需品を買うのが苦手だと書いたが、逆に、あってもなくてもいいものを買うのは好きだ。必要以上のマーカーペン(さいきんはぜんぜん蛍光色でないものがたくさん売っている)、マスキングテープ、マニキュア、おやつ(とくに個包装のがたくさん…

2020-09-05(買い物/緑の光線/雲)

たぶん、生活必需品を買うのが苦手だ。服、下着、おやつ以外の食べ物、絶対必要な化粧品(アイブロウとか)など。必需品なのにある程度選択の幅があるから、何を選んだらいいのかがわからない。だから、できるだけ決まったものを買うようにするとストレスが…

2020-08-27(べつの仕方で/アレゴリー)

レヴィナスの議論のほとんどすべての決定的な点において、「別の仕方で」という意味の可能性ないしは構築は、「あたかも〜のように」にもとづいている。「あたかも〜のように」は、懐疑論における問いかけや言語の多義的本性がそうであるように、意味の開け…

2020-08-22(子供時代/コメット/ズー)

——それは初めてのことだったの、あなたがこんなふうに言葉に捕らわれたのは?——それが以前にもあったかどうか、思い出せない。でも、これ以後も、人に襲いかかり人を閉じ込める言葉の外へと、怯えて逃げだしたことが何度もあったわ。——幸福という言葉でさえ…

2020-08-19(人形愛/マルジナリア/学魔)

最近読んだ、でいるもの。 ●高橋たか子『人形愛・秘儀・甦りの家』 三篇とも、中年以上の女が少年を人形にするというテーマがあり、たぶん澁澤龍彦への明確なアンチテーゼなんだと思う。『誘惑者』にははっきり澁澤が出てくるが、著者自身による略年譜にも19…

2020-08-12(無垢なる夏/ハッピーアワー)

あさ起きてもまだくらく雨の音がして、じっとそれを聞いているとまたいつの間にか寝てしまっていた日々が恋しい。夏休みに入ってからはすっかり晴れの夏っぽい日が続いている、いちばん暑い時間帯に外に出なければならないのが夏への憎悪を増幅させる。『無…

2020-08-05(ノート/書く)

私はノートをつけることが結構好きで、人がどうやってノートをつけているのかを見るのがもっと好きで、どれくらい好きかというと、小学生の時に「東大生のノートはなぜ美しいのか2」をお小遣いで買うほど好きで(東大に行きたいとかじゃなくて、普通に色ん…

2020-08-02(外は夏/逃避)

絶対むりと思ってたレポートたちも、なんやかやとむしろ最後は余裕があり、ズルする(過去の自分のレポートを焼き増しする)こともなく無事に全部提出して、夏休みを迎えた。終わってみると、あんなにあわあわして絶望的な気分になってたのはなんだったんだ……

2020-07-22(他者/読めない)

また二週間以上あけてしまった。 愛が他者との融合であるとするなら、愛が他人の申し分のない美点を前にしたときの恍惚であるとするなら、あるいはまた心穏やかになにかを所有することであるとするなら、マルセルはアルベルチーヌを愛してはいない。 レヴィ…