2023-06-04

ひさしぶりに胴体に発疹が出て、疲れているのだなと思う。よく考えてみれば、入社以来驚くほどの閑さだったのに、5月になって急に忙しくなり残業も30時間程度あり(まあ同業種の他の会社に比べれば少ない方だろうが)その疲れも妥当である。このあいだ買った黒いかわいい服を着てデートへ。毎日通話を繋いでよく話しているけれど実際に顔を見たり触れられたりする距離にいることは重要で、講義も労働もなにもかもリモートでよいと感じるが、遠距離恋愛はできない。行きには、『ロリア侯爵夫人の失踪』というドノソのエロ小説を読んでいた。エロ小説かと思いきや途中から犬小説になった。いつも特になにか大きな目的があるでもなく外をふらふらと歩いたり、内に数時間こもったりしているが、この日はかれのお財布を買うという目的があって、それは達成した。前のお財布も五年くらい使っていたらしいが、次のもそれくらい使うのだと言っていた。私との関係よりもお財布との関係の方が長いのかもしれない。私がどうしても我慢ならないという理由で、ほとんど無理やり買い与えたのだが気に入ったようであるならばよかった。日が落ちた刻に外で座って喋っていると草陰からねずみが飛び出してくる、という同じことが違う場所でもう三度もあった。店で向かい合って座っている時より、隣に並んで歩いている時のほうが話しやすい。また満月を見て、解散して、一人になって駅のホームのベンチに座っていると、とつぜんお風呂上がりのようないい匂いのする女性に話しかけられた。スマホを見せながら話しかけてくるので、乗り換えがわからないのだろうかと予想しノイズキャンセリングイヤホンを外して聞いてみると、「正しい日本語どうしたらいい?」とLINEの画面を見せてにこにこしている。つまり意味が伝わるような日本語で返信するのを手伝ってほしいとのことで、かのじょの笑顔と真剣さをみるに、まだそこまで関係は深くないが好意のある人への返答としてどういった表現が適当なのかを考えたいみたいだった。それは日本語がある程度使える人間であってもむずかしい。そこまで語用の正しさにこだわらなくともだいたい伝われば良いだろうと、かのじょが喋っていたことをそのまま文字にしたのだが、最後にありがとう、おやすみなさいと言ったのでそう打ちかけたら、スマホを私から取り戻して、ありがとうの後に顔文字を加え、さらにふきだしを新しくしておやすみなさいを打っていた。共通した言語を第一言語としている者どうしでも私は言葉が通じないと感じてしまう場面が多く、だから言葉が通じること、やりとりそのものに楽しさを見出せる相手のことが好きになったが、どうも言葉のことを過信しているようでその態度が誤っているのかもしれないと思い始めている。「推しの子」の主題歌のアイドルを、インスタをぼーっと眺めていると日に何度も聞くことになるが、「愛してる」と言い続けることが私にとってもあなたにとっても真に聞こえ続けることは、本当に愛しているということなのではないだろうか。