2020-12-13(風/他生の記憶)

 

好きとか嫌いとかなくたんたんと先へ泳いで行ける人、泳ぐ能力はあるけれど陸地を離れてしまうのが怖くてあんまり遠くへ行かれない人、好きだから頑張って泳いでいく人、海へ憧れ続けて陸にいる人、海とは違う方向を見るようになった人。

 

『アダンの風』をつくった青葉市子は、文字通り海へふかくふかく潜り込んで、そこで触れてしまった世界の核のかけらの一粒を持ち帰ってきれいに磨いてみせてくれる。

 

〈かくてわれらは死せるなり〉水のごとき風に目覚めて他生の記憶は/井辻朱美