2021-03-22(不眠/天使/努力)

白昼の星のひかりにのみ開く扉、天使住宅街に夏こもるかな/浜田到
この星はあなたにあげる「るー」るーと五月蝿い天使、歯で追い退けるー/白糸雅樹
何食わぬ顔で天使が乗っている最終電車は星を灯して/佐藤りえ
純白のシクラメン立つ冬の隅 天使が鼻をかみすてたあと/井辻朱美
この映ゆい水晶のなかをあるくから大天使さえ風邪の目をして/同
くりかへし翔べぬ天使に読みきかす——白葡萄錯酸製法秘伝/塚本邦雄
見えないものは天使・妖精・死んだ人だときみは言ふ ゴンドラ揺れて/森島章人
キスに眼を閉じないなんてまさかおまえ天使に魂を売ったのか?/穂村弘
もはや世界の感触もない水曜のポケットに天使を孵化させた/荻原裕幸
天使まざと鳥の羽搏きすなるなればふと腋臭のごときは漂ふ/葛原妙子
氷翼を負ひたる嬰兒雪天使ゆめなるあをき眸瞬かず/同
不眠の天使さまよひゐるべし小さな黒菫の束あるあたり/同


天使の語が入る短歌で、ツイッターで見られるものを収集した。このように単語で短歌をあつめてくるのが好き。こうしてみるとやはり葛原妙子の歌がとくに優れていると感じる。天使から腋臭にはとべないでしょう、ふつうは。葛原妙子の歌集を手元におきたい。

 

さんがつ、外界の世界との接触が急にふえて、文字に沈むこともほとんどなくなっている。私は今の私がなにを見て、なにに怒り、なにを愛するのかを知りたい。それを聞くことでなにがわかるのかわからない質問には、答えることができない。

 

「あなたがお望みなら、わたしを浄くすることができます」。
努力の感覚を苦しみの受動的な感覚に変容する訓練を積まねばならない。これは確かだ。わたしには稀なことだが、努力くらいはできる、やりかたを選ばぬならば。
シモーヌ・ヴェイユ重力と恩寵』、冨原眞弓訳、岩波文庫218

 

 この努力とはもちろん、コナトゥスのことだろう。